野菜も機能性表示食品として届け出ができる!

機能性表示食品制度は2015年4月に始まりましたが、その多くはサプリメントなどの加工食品が占めています。機能性表示食品として届け出られる野菜の数は増えていますが、届け出には野菜特有の難しさがあります。野菜を機能性表示食品として届け出るための課題やメリット、現在届け出られている野菜の種類などについてまとめました。

野菜の機能性表示食品の現状と課題

生鮮食品に機能性表示ができる仕組みは、世界でも類を見ないものです。農林水産省によると、2022年3月の時点での野菜の届け出は48件となっています。しかし、野菜を機能性表示食品として届け出るには多くの課題があります。

生産者から見た課題の1つは、届け出に手間と費用がかかることです。機能性表示食品は、事業者の責任で機能性の科学的根拠を示さなければなりません。国が安全性と機能性を審査するものではありませんが、事業者による評価は国の定めた一定のルールに従って行われ受理されています。

2つ目の課題は野菜の性質上、届け出受理のタイミングと出荷時期が一致しないことです。サプリメントとは異なり機能性関与成分の含有量の一定化が難しいことや、季節にかかわらず消費者が継続的に摂取できる生産と流通の仕組みを整えることも課題となっています。

流通業者側から見た課題には訴求の内容が限られるため消費者への訴求が難しく、売り場の管理に手間がかかることが挙げられます。それだけでなく野菜の小分けや箱詰めなどに時間がかかり鮮度の維持が難しく、野菜の包装容器も変わるため表示管理がしにくいデメリットもあります。

届け出の商品数も少ないため、機能性表示食品の野菜として売り場を確保しにくいことも訴求を妨げています。小売りの頭を悩ませているのは、価格帯が通常の野菜より高い場合が多く食品ロスのリスクが高まることです。野菜にも機能性表示ができることを知らない消費者が多いことも、訴求を難しくしています。

消費者側から見た課題は機能性表示食品の野菜が少ないため、買う場所が限られてしまうことです。摂取量の確保や摂取の継続が難しく、機能性の効果を実感しにくいこともネックになっています。

野菜の機能性表示食品を増やすための国の取り組み

機能性表示食品制度の本来の目的は、消費者が知識を持って食品を正しく選べるようにすることです。しかし安倍政権がこの制度を作った意図の1つは、わかりやすい表示をすることによる農産物の海外展開でした。そのため、現在国は野菜の機能性表示食品を増やそうとしています。

農林水産省は機能性表示食品の取り組みを促進するため、品目ごとの相談窓口を設置しました。

野菜と果実については農産局園芸作物課流通加工対策室が担当となっており、機能性表示食品の届け出を考えている生産者団体などをサポートしています。消費者庁は、2018年に生鮮食品の機能性表示食品制度を改善しました。

届け出に関しては、手続きの運用の改善と書類の簡素化を行っています。これにより、事業者はすでに届け出られている科学的根拠を活用して届け出が行えるようになりました。届け出済みの機能性表示食品の軽微な修正に対しては、消費者庁が効率的な確認作業と迅速な対応を約束しています。

機能性関与成分の含有量に関しては、含有量を考慮した表示が可能になりました。具体的には、機能性関与成分の量の一部が摂取できることが表示可能になったことです。下限値を下回る場合がある旨を表示するときは、明確な品質管理の記載が必要です。

包装や表示に関しては包装表示が複数ある場合、あらかじめ表示見本として届け出ることで使用が許可されます。表示義務文字数が多過ぎて包装に表示できない場合は、消費者に誤認を与えない範囲でプレートなどへの義務表示が認められました。

機能性表示食品における表示義務を確認しよう

野菜の機能性表示食品第一号は、大豆もやし

生鮮野菜の機能性表示食品として初めて届け出されたのは、株式会社サラダコスモの「大豆イソフラボン子大豆もやし」です。2015年8月3日に届け出が行われ、同年9月3日に受理されています。この商品の機能性関与成分は大豆イソフラボンで、「骨の健康が気になる方に」という機能性が表示されていました。

もやしは工場生産されているため、他の野菜のように生産地による差別化などが難しいとされていました。同社は機能性表示食品制度が始まる前の2014年から「子大豆もやし」のパッケージに大豆イソフラボンが含まれることを記載していましたが、売り上げにはまったくつながりませんでした。

ところが機能性表示食品として認められたことにより、売り上げが急増したのです。もやしは、機能性表示食品と相性のよい野菜です。商品の差別化を妨げていた工場生産が商品品質を安定させ、一定量の機能性成分の含有量の確保を可能にしています。

機能性表示食品になったことで「子大豆もやし」のイメージが上がり、「風味がよくて栄養価が高い」「健康の維持増進に役立つ」という新たな価値を与えました。2020年に同社から機能性表示食品として届け出られた「子大豆もやし 芽ぐみ」は大豆イソフラボンとGABAを機能性関与成分として、「肌のうるおいを保つ」「高めの血圧を下げる」「骨の成分を維持する」という機能性を表示しています。

野菜の機能性表示食品のメリットと可能性

野菜の機能性表示食品の生産者のメリットは、野菜に付加価値をつけることで差別化が可能なことです。成分や機能を消費者に訴求することができ、健康に関心のある高齢者など潜在的な需要を引き出せる可能性があります。

これにより市場が活性化し、収益を見込むことができます。流通業者の利点は品ぞろえの差別化や多様化ができ、売り場の魅力度が向上することです。健康という観点からの訴求も可能になります。消費者は野菜にも機能性表示食品があると知ることで、これまでわかりにくかった野菜の健康上のメリットを理解できます。

これにより、食べ物で健康管理ができるようになります。

現在、機能性表示食品として届け出られている野菜

2022年3月の時点で機能性表示食品となっている野菜には、もやしの他にもケールやなす、トマトなどがあります。ほうれんそうやパプリカ、カボチャなどの緑黄色野菜や、えごまの葉や唐辛子、にんにくなども機能性表示食品です。

珍しいところでは、へちまもGABAを機能性関与成分として機能性表示食品と認められています。

野菜の機能性表示食品には多くのメリットがある

野菜が体によいことは、多くの人が知っています。しかし、どの野菜にどんな成分が含まれ、どんな機能を持っているのかはわかりにくいのが現状です。機能性表示食品の野菜が増えることは消費者の野菜への理解につながり、食品を通しての健康の維持増進が期待できます。

生産者にとっても野菜のイメージアップや、健康面からの訴求が可能になるメリットがあります。

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